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Chosen
- 賃貸
#001
“改修”をコントロールできる窪の貸し家
基本賃料 45,000円/月
国内外の観光客に人気が高い「鈴木大拙館」や「金沢21世紀美術館」などに徒歩圏内の本多町。大通りから脇道に入った閑静な住宅街に建つ、昭和47年築の鉄筋コンクリート3階建て、全12室の賃貸マンション。
SWAY DEISGNがまだ創業者の個人事業だった頃、
「金沢で面白い物件を探してほしい」とY氏から言われ、見つけた物件がこの築50年のマンションだった。
Y氏は、SWAY DESIGNの代表が東京で働いていた頃、事務所ビルをホテルへと転用する計画を手がけていた際に施工業者として現場に入っていただいた建設会社の代表を務めている。建築の仕事への強い想いのある方で、それ以来ずっとお世話になっている。
当時この本多町コーポの入居者は半分にも満たず、また、その多くは倉庫として使用されていた。
外壁の塗装は剥がれ、手すりに錆が浮き、通路のアスファルトはガタガタで草も生えている。夜になると真っ暗となり一人で歩くには怖い。
さらに中に入ってみると、水道からは錆水が出てきて、雨漏りする部屋もあった。
駐車場にするには土地の形が悪く、効率のよい配置計画が立てられない。それに、RC3階建てを解体するには費用がかかり過ぎる。
この頃のSWAY DESIGNは、これまでの首都圏での不動産再生事業の経験を活かして
「不動産のお困りごとや課題を建築的な手法で解決します」
をうたい文句に掲げて活動していたものの、強い意気込みとは裏腹に、そのような相談はまったくない状態だった。
不動産会社へ企画書を持参して声かけしても響かなかった。
石川県で示せる実績も具体的事例もないことが大きな要因だろうが、
開業してまだ僅か、これこそは!と面白い物件に出会ったところで自ら物件に投資することも無理な段階であった。
そんな中、機会を提供してくれたのがY氏だった。
この課題山積の本多町コーポを再生したいという提案に対し、物件のオーナーとなることを快諾してくれた。
「やる以上は満室に」と、この一棟を託され、前例のない再生事例を生み出すべくマンションの全面リノベーションに向けて動き出すこととなった。
***
1階がテナントの複合型マンションとして再生
全室住居用マンションとしてリノベーションすることも検討したが、
まちなかに近いロケーションということから、テナントの需要があると考え、
実験的に1階すべてをフルスケルトンの状態でテナントとして貸し出すことに。バルコニーだった部分を撤去して、外部から直接店舗へ入れる階段を設置した。
2・3階の居住空間は、壁を取り払って窮屈だった2DKからゆったりとした1LDKに変更し、内装と設備を一新。懐かしい雰囲気の外観はあえて残して塗装色を変えるのみに。敷地内の通路は舗装し直した。
改修にともない、賃料がアップする旨を現入居者にお伝えしたところ、住居として使っていた3人のうち1人が住み続けていただけることに。しかしながら、初めての試みゆえ、この築古マンションに一体どれくらいの人や店が入るのかはわからない。
それゆえ、まずはここで不動産企画会社 兼 管理会社を構えながら満室にしていこうと、101号室にSWAY DESIGN自ら入居することにした。
図面がなかったこともあり、電気配線や給排水の工事に苦労し、壊しながら図面を描きあげ、作りながらまた図面を修正し、完成までには一年以上を要した。
入居者募集の内見案内には、物件購入の仲介をしてくれた「ことのは不動産」に協力していただき、1階テナントには、設計事務所の当社のほか、ヨガスタジオ、鍼灸院、雑貨屋と個性あふれる店舗が入居。その後、当社は泉野町に社屋を移転することになり、101号室にはソフトクリーム店が営業中だ。
中には上階の部屋に住みながらテナントで働く方もいる。
テナントの店主や住人たち同士の交流も生まれ、連日多くの人が訪れる魅力ある小さなビルに生まれ変わった。有り難いことに、部屋に空きが出てもすぐに部屋が埋まる満室状態が続いている。
不動産の再生事業への実績が何もなかったSWAY DESIGNにY氏が機会を提供してくれたおかげで、本来のやりたいことをかたちにできた1号物件となった。
「本多町コーポ」は今までにない再生事例となり、SWAY DESIGNがこの道に進む大きな転機となった。
だが、これで終わりではない。
今後10年、20年経てば、また需要の変化が起こり得る。そうなれば2階もすべて事務所になるかもしれないし、古いビルをリノベーションしたベトナム・ホーチミンの「26リートゥチョン・アパートメント」みたいな雑居ビルにしても面白いな、と考えている。
時代とともに働き方も住み方も変わっていくのだから、古い内装を変えるのではなく、用途ごと考え直す必要がある。
住居、店舗、事務所などの使い方によっては、建築基準法や消防法といった対応すべき法律が変わる。設備の増設や構造的な対応など、その複雑さ故に企画は立ち消えになることも多くあるだろう。私たちの一級建築士事務所としての専門知識はそこで発揮される。
また、社屋を引っ越した現在も当社が管理会社として携わり、入居者からの不具合の問い合わせにも対応している。
外壁・防水などハード面の点検は、メンテナンスの一側面に過ぎない。もし不具合があれば使い方によるものか全体的な老朽化なのかの原因を見極め、修繕か、より根本的な処置が必要かを判断する。物件の稼働率によっては、求められるテイストや、収入と相場感など世の中の変化を読み取って、物件の活かし方やニーズも探り直す。「本多町コーポ」は、いわば“受信装置”のような存在だ。
これからどんなふうに変化していくのか、楽しみながら次の策を練っている。
※掲載の情報が現状と異なる場合には、現状を優先するものとします。
営業時間 / 9:00~18:00(月〜金)
取扱い業者 / 株式会社SWAY DESIGN
住所 / 〒921–8034 金沢市泉野町6丁目1–1
免許番号 / 石川県知事(1)第4275号
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