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  • 賃貸

#002
ストーリーのある寺町の貸家

金沢市寺町。犀川南岸の高台に位置し、70を超える寺院が点在する歴史あるまちだ。寺町通りには昔ながらの商店が軒を連ね、「窪化粧品店」はその一角に建つ。

 

かつては化粧品をはじめ、ファッション小物や日用品にいたるまで、幅広いジャンルの商品を販売する地域密着型のお店だった。店主は現在の所有者であるU氏の祖母で、両親から譲り受けた土地に2階建ての店舗兼住居を新築して商売をスタートさせた。大阪にまで買い付けに行くほど商売熱心なうえ、彼女の人柄も手伝って、長年にわたって地域の人たちに愛されるお店となったという。

 

そんな中、U氏の祖母は突然倒れて寝たきりになってしまい、老人ホームに入所することになった。それにともない、たった一人の身寄りであるU氏が成年後見人として建物の管理を行った。当初は祖母の面会も兼ねて月に一度ほど定期的に東京から訪ねていたものの、祖母が亡くなった後は法事の時以外わざわざ足を運ぶ意味が感じられなくなり、換気扇を回しっぱなしにして23年もの間そのままにしていた。

 

だがそのうちに、U氏が相続した建物を維持するために必要な固定資産税や電気代、火災保険などの出費が積み重なっていくのをなんとかしなければという危機感が膨らんできた。一方で、祖母の思い出が詰まった住まいを売却したくないという思いもある。気持ちの整理がつかなかった。

 

そこでU氏は金沢市内の2軒の不動産会社に出向いて相談することにした。

しかし、その回答は

「賃貸か売却か、どちらにしても中の荷物を撤去して水まわりまで修繕しないといけない」

「結局は売却が一番妥当だが、試算金額はトータルしたら0に近くなる」

というようなもので、納得のいく解決策は見つからなかった。

 

コロナ禍で動きづらい状況もあった。遺品整理は手をつけたところでなかなか進まない。ある程度の自己資金は用意していたとはいえ、100%借り手がつくとは限らない建物の改修のために高額の初期投資をすることへの大きな違和感もあった。もっと別のいい方法がないかと悶々とする日々がただ過ぎていくばかりだった。

 

そんな時、築50年の空室マンションを改修して満室物件によみがえらせた本多町コーポの紹介記事に出会った。“建築と社会の関わり”を考える、建築会社の取り組みに興味が湧いた。ここがダメならもう解体して売却するほかないのだろう。そんな思いで最後に相談したのが当社だった。

 

空き家となった「窪化粧品店」の状態を確認すると、活用には浴室などの水回りを中心として改修する必要があった。また、U氏の祖母が暮らしていた当時のまま家財道具が残されており、ほとんど片付けが進んでいない状態となっている。2階には先に亡くなったU氏の叔父のアトリエがあり、趣味で描いた油絵のキャンバスも大量に遺されている。1階の店舗部分には商品の在庫もたくさんあった。その中には祖母が買い付けしたバッグやレトロな雑貨など、まだ十分使えるモノ、きっと欲しい人がいると思える掘り出し物も多く見つけられた。

 

私たちが提案したのは、

「中に遺されたモノたちも含めて、よいチョイスが建物を管理・活用しながら使い手を探す」

という、カテゴリーにとらわれない選択肢。

U氏は「現状と課題に向き合った、既存の枠に捉われない新しい提案は依頼した側としても興味深い」と快く受け入れてくれた。

 

***

建物に息づくストーリーを大事にした賃貸を考える

 

私たちは、U氏の亡き家族の思い出が詰まった建物だけでなく、建物内の残置物についてもできる限り使い手を探すことにした。そのための準備として私たちが建物で作業していると、久しぶりにともった灯りに気づいた商店街の人が次々にやって来る。「窪化粧品店」がいかに地域の人たちとのつながりが強い存在だったかが窺い知れる。

 

そこで考えたアプローチは、この建物を活用したイベント告知という方法だ。

家の中に遺されたモノたちを陳列して希望者に譲渡したり、地元アーティストを招いて、叔父の絵画とのコラボ作品を創作してもらったり…。

ガレージセール風イベントを通じて「窪化粧品店」のストーリーごと物件を知ってもらい、借り手を見つけたい。

さらには、地域の人たちとのコミュニケーションをとるきっかけとなり、同じような悩みを抱える物件の解決、ひいてはこの地域全体の課題解決への受け皿として、私たちがこのまちとつながっていけたらとの思いもある。

 

建物は、住宅としてはもちろん、シェアハウスやオフィスに活用してもいいだろう。だから今回は、自由な賃貸のスタイルをとることにした。修繕が必要な浴室は借り手がDIYしてもいいし、私たちに工事をおまかせいただいてもいい。

 

「窪化粧品店」は、この地で暮らす多くの高齢者たちにとっても心を満たすかけがえのない場所だったにちがいない。だからこそ、形は変わってもここが地域の人たちが楽しく交流し、まちに活気をもたらす新たな場所となってくれたらと願う。

物件タイプ

住居・事務所・店舗・アトリエ

所在地

石川県金沢市寺町2丁目7番地1

交通

北鉄バス 寺町2丁目徒歩1

建物面積

1階:56.16㎡ 

2階:59.73㎡ 

延床面積:115.89(35.05)

構造規模

木造2

敷地面積

77.50㎡(23.44)

築年

1980年6

現況

居住中

賃料

現況の場合、商用60,000/月、その他50,000/

敷金/礼金

1ヶ月/1ヶ月

管理費

5,000円

取引形態

一般媒介

設備

特記事項なし

備考

設備負担・改装等は応相談(貸主の承諾を得て行った部分は原状回復義務なし)

情報登録日

2023年2月9日

※掲載の情報が現状と異なる場合には、現状を優先するものとします。

関連物件

営業時間 / 9:00~18:00(月〜金)

取扱い業者 / 株式会社SWAY DESIGN

住所 / 〒921–8034 金沢市泉野町6丁目1–1

免許番号 / 石川県知事(1)第4275号

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076 255 0690

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